KAOS (92) 過程ベースの仕様 (4.4.2-4)

演算子の続きである.

「以後(henceforth)」演算子 □

(σ, j) ⊧ □p   iff   (σ, k) ⊧ p for all k ≥ j.

これといった訳語がない.「ずっと p である」といった意味になる.

この記号は,様相論理では,「必然」であった.必然ということばは,「〜して当然」という含意もあり,その解釈はさまざまであった.時相論理における□には,そういうややこしさはない.

次に,□ (x > 3) の真理値表を考えてみる.今回も,時間経過を示す j と x を混同しないようにというのが注意である.

「□ (x > 3)」真理値表
j 0 1 2 3 4 5 6
x 1 3 2 4 3 5 4
x > 3 F F F T F T T
□ (x > 3) F F F F F T T

時間 7 以降も,x は 4 より大きいとしている.

「いつか(eventually)」演算子 ◇

(σ, j) ⊧ ◇p   iff   (σ, k) ⊧ p for some k ≥ j.

「いつかは p になる」という意味である.

様相論理では,「可能」という意味であった.

「◇ (x = 4)」真理値表
j 0 1 2 3 4 5 6
x 1 2 3 4 5 6 7
x = 4 F F F T F F F
◇ (x = 4) T F T T F F F

「まで」U (until) 演算子

(σ, j) ⊧ p U q   iff   k ≥ j となる k があり,(σ, k) ⊧ q が成り立つ.かつ,全ての i において,j ≤ i < k で,(σ, i) ⊧ p.

どこかで q に出会う.それまで p が続く.p … p q という列を考えている.

次は,(3 ≤ x ≤ 5) U ( x = 6) の例である

「(3 ≤ x ≤ 5) U ( x = 6) 」真理値表
j 0 1 2 3 4 5 6
x 1 2 3 4 5 6 7
3 ≤ x ≤ 5 F F T T T T F
x = 6 F F F F F T F
(3 ≤ x ≤ 5) U ( x = 6) F F T T T T F

「(よわい)まで」W (Unless, Waiting-for) 演算子

(σ, j) ⊧ p W q   iff    (σ, j) ⊧ p U q or (σ, j) ⊧ □p.

基本的には,Uと同じである.ただ,q に出会わなくても良い.その場合は,p が続く.

訳語が難しく,ここでは,「(よわい)まで」とした.

次の真理を考える.[(3 ≤ x ≤ 5)  ∨  (x ≥ 8)] W ( x = 6)

「[(3 ≤ x ≤ 5)  ∨  (x ≥ 8)] W ( x = 6) 」真理値表
j 0 1 2 3 4 5 6 7 8
x 1 2 3 4 5 6 7 8 9
(3 ≤ x ≤ 5) ∨ (x ≥ 8) F F T T T T F T T
x = 6 F F F F F T F F F
[(3 ≤ x ≤ 5) ∨(x ≥ 8)] W ( x = 6) F F T T T T F T T

表をおいかけるのは面倒だが,対象とする命題の真偽が,時間によって変わるのが実感できる.

なお,ここまでにでてきた演算子は,お気づきの通り,「未来」に関するものである.次回は,幾つかの例をみてから,簡単に過去の時制演算子を見ることにしたい.

(nil)