KAOS (18) 避けるべき欠陥 (1.1.7-2)

誤りと不備

 省略は,検出が難しい.しかし,いつでも生じる (p. 38)

ここでは,要求仕様書に存在するかもしれない欠陥についての記述である.誤りと不備から構成される.

欠陥の名前は,原文でも少しくだけた名称となっているので,合わせた(やり過ぎかもしれない).ちなみに,ここで書かれている項目の多くは,Meyerさんの有名な論文「仕様における形式性について」 1にあるものと共通である.くだけた書き方は不謹慎かもしれない.

なお,問題世界・機械世界とあるのは,別の場所では,世界・ソフトウェアとしている.基本的に同じである.「世界」は更に「環境」としている場合もある.これが要求だとすると,下記にも当てはまるか.

要求文書の欠陥
省略 問題世界の特性を記述していない(目的がない・要求がない・前提がない)
矛盾 問題世界の特性記述に,不整合がある
不十分 問題世界の特性を,十分に記述していない
あいまい 異なる解釈を許す書き方をしている
数値がない 代替策と正確に比較することができない.或いは,実装した機械を検証することができない
ノイズ 問題世界の特性に対して,何の情報も得ることのできない記述がある
書きすぎ 問題世界を飛び越えて,機械世界の記述となっている
ムリ 指定の予算・スケジュール・開発プラットフォームで実現することは,現実的にムリである
意味が通じない 要求仕様書の利用者が,書いてある意味を理解できない
文書の構造がだめ 意味的にも視覚的にも,正しい文書の構造となっていない
先走り まだ定義していない問題世界の特性を使っている
深い後悔 問題世界の特徴記述のタイミングが遅かったり,気まぐれで書かれている
修正できない 特定の箇所を修正しようとすると,要求文書全体に影響がでてしまう
不明瞭 理由・担当・依存関係が不明である

赤字の項目は,誤り(errors)で,その他は不備(flaws)としている 2.当然,前者の方が問題になる.

(nil)

Notes:

  1. B. Meyer. 1985. On Formalism in Specifications. IEEE Softw. 2, 1 (January 1985), 6-26.
  2. すなわち,欠陥(defects):= 誤り + 不備である