高品質の要求を「エンジニアリング」することは,きわめて重要なことである.要求・前提・ドメインプロパティ中に誤りがあると,場合によっては,多数の人に影響し,長く続き,非常にコストがかかる.そして,危険な状況を引き起こす.(p.51)
ここでは,要求工学の重要性について,負の側面から見ている.重要だから間違いがあっては困るというのは当然だが,改めて箇条書きになると気が引き締まるに違いない.
技術面
- 受け入れテストデータの導出
- ソフトウェアアーキテクチャ設計とコンポーネント/コネクタ識別
- 品質保証チェックリスト定義
- 設計文書およびユーザマニュアル作成
- ソフトウェア進化のための対応
コミュニケーション面
要求文書は,ソフトウェアプロジェクトに関係する人たちが,ソフトウェアに対して意思疎通を図るときに,もっとも参照するものである
プロジェクト管理面
要求文書は,プロジェクトコスト・必要なリソース・開発ステップ・マイルストーン・レビューポイント・スケジュールを決めるための基礎文書である
法的面
要求文書は,ソフトウエアを提供する組織・顧客(・再委託先)契約において,コアとなる文書である
認証面
法規によって,品質基準を強制することが増えつつある.特に,医療・輸送・航空・原子力といった分野が相当する
経済面
多数の人に影響し・長く続き・非常にコストのかかる要求文書の誤りは,経済的に大きな影響を与える
社会面
十分にユーザ中心に考えられていないと,要求工学プロセスは,重要な必要性や制約を見過ごすかもしれない.結果として,(システムを使用した)活動に悪影響及ぼす.システムは,部分的に利用する・間違って利用するか全く使われないまで,様々な反応を引き起こす.結果として,そのシステムの利用を前提とした人間系を含む社会システムに大きな影響を与える.
最後の例では,ロンドンの救急システムの問題が挙げられている.同じ救急に関しては,最近私が読んだ記事にも類似の例がある.システムのデザイン変更により,同様に救急搬送の問題解決ができた佐賀県の例である 1.システムに誤りがあれば,救えたハズの命も危うくなる.
特定の医療機関への搬送が集中していることが救急隊員にもリアルタイムに確認できるようになり,考えて行動できるようになったことで,搬送先の分散化を実現できた.
(nil)
Notes:
- 「ITが救急車・救命士・救命センター連携を変える」 臨床画像 Vol.30 No.9 2014 ↩