要求工学のスパイラルモデルにおける最初フェーズを扱う.即ち,「問題領域の理解と要求を引き出す」という絡み合ったプロセスである.(p.61)
いよいよ(ようやく)2章である.ここからは,以前にみたスパイラルモデルの各象限毎に,章が与えられ,詳しい考察を行う.最初は,冒頭にある,「問題領域の理解と要求を引き出す」ことである.その中でも,今回は,誰もがそうするであろう,「人に聞く」である.
人といっても,多くの場合は,窓口として特定の担当者かもしれない.その人から,要求を単に聞き出せば済むのかもしれない.
ここでは,比較的大きなプロジェクトを想定する.要求分析も仕事と考えているベンダや,社内で要求をまとめる担当者を考える(そうしないと,話は半分くらい終わってしまう).
最初にすることは,利害関係者を見つけることである.利害関係者が,誰かというのは,重要である.
基本的には,システムに直接,関わる人々.例えば,新システムの開発責任を持つ人,検査する人.教育する人.ユーザ.現行システムがある場合は,そこから類推することも可能である.
将来システムでは,より広い範囲に影響を及ぼし,新たな利害関係者がいるかもしれない.現状から類推することは容易だが,新しいシステムが動いたときに,人々の振るまいがどう変化するかを想像することは難しい.
利害関係者を代表する人が誰かということも,大事である.
窓口として要求を伝える人が一人だとしても,どこまで彼の言葉に依存するかで,プロジェクトの成否が決まるかもしれない.例えば,彼は他の利害関係者の言葉を(意図的に?)間違って伝えるかもしれない,或いは,そもそも重要な利害関係者であるユーザの存在に気がついていないかもしれない.
窓口の人は,正しく要求を伝えてくれている,と思う人は幸せである.
どのような障害があるかについて,幾つか項目を挙げている.
- 分散し衝突している知識源
大きなプロジェクトでは,多くの知識源としての利害関係者がいる.利害が衝突している可能性が高い.
- 情報源への近づきにくさ
多くを知っている人は,忙しい人でもある.話を聞く機会は限られる.
- 良いコミュニケーションの難しさ
異なった背景・用語や文化の違いがある.これらは,コミュニケーションを難しくする.
- 暗黙知と隠された必要性
大事なことは,情報源にとって当たり前のことであり,それは語られないことが多い.
- 社会政治学的要因
情報源は,情報を持つので,現状において力があるのかもしれない.だとすると,変化は望ましくないと考えるかもしれない.
- 不安定な状態
世の中は,変化する.また,聞くべき人も変える必要があるかもしれない.
上記を踏まえての対応が必要がある.しかし,簡単ではない.
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