(複数の回答者がいる.)回答者は,対象を選択に従って,グループ化する.どうグループ化したかを,回答者毎に比較する.対象には図が書かれているかもしれない(図仕分け,picture sorts).物理的な何かかもしれない(アイテム仕分け, item sorts).或いは,カードに名前ないしは,状況が書かれているかもしれない(カード仕分け,card sorts) 1
カード・ソート法の基本的なアイデアは,前回のレパートリー・グリッド法と同じくPCTから来ている.前回の例では,構成が決まっているところからスタートし,直ぐに数値化している.カード・ソート法は,その前段階で利用するのに適している.
一般的なカード・ソートでは,カードに名前を書いておく.それを単一の基準で,グループ化する.そのときの基準が,一つの構成となる.このグループ化を繰り返し,複数の人で実行することで,複数の構成(レパートリー・グリッド法でいえば,レパートリー)を作ることができる.
冒頭に引用した論文では,カード・ソートを用いて,WEBページの評価を行ったケーススタディである.WEBは,British Sugar 社である.ここでは,要素(或いはオブジェクト)は評価者である.砂糖を生産する農家の人・WEBデザイナ・一般人に分かれる.9つのスクリーンダンプしたWEBページをそれぞれグループ化する.前述のように,一回のグループ化で用いる基準は,一つである.例えば,「読みやすい」という基準を用いれば,読みやすいページのグループと,そうではないグループの2つに分かれる.この「読みやすさ」は一つの「構成」となる.
同じページの組に対して,基準を変えながらグループ化を繰り返す.これにより複数の「構成」を得ることができる.このことから,立場によって,どういう視点から見ていて,そのときにどういうページを好むかが分かる.
基準として用いる言葉は,(その場で考えるため)様々である.ことば(構成)を整理することにより,最終的に共通理解ができる.
この「構成」と要素(農家の人・WEBデザイナ・一般人)からなるグリッドができる.ここまで来れば,あとは前回のレパートリー・グリッドと同様に扱うことができる.
カード・ソート法から連想するのは,KJ法である 2.カードを用いて,グループ化編成するところは,よく似ている.一度の実行ではだめで,繰り返しグループ化を試みること.違いは次の点である.カード・ソートでは,グループ化は必ず単一の基準で実行する必要がある.KJ法では,近い概念同士を集めるということに重点を置いている.分離と集約のどちらに重きを置くかという違いになるだろうか.
ところで,ともに帰納的なアプローチである.発想を生み出そうとするときの演繹的アプローチの戒めである次の文は,時代を感じ,ほほえましくもなる.しかし,人間の心根はいつも変わらない.
これをたとえていうと,大分けから小分けへとすすめようという我のあるところには,ヒットラーやスターリンのような心がある.(発想法,p.78)
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