不整合が生じることが,規則からの逸脱という例外的な事象ではなく,それがルールである世界に住んでいる.そのことを,要求工学の実践者は,知る必要がある. (p.88)
3.1節は,不整合がテーマである.最初に不整合の規則があり,次にその扱い,最後に不整合の解決方法が記述されている.最後には,不整合と云うより一般的な問題解決手段にも利用できる(それも,とても有効な)アイデアが示される.従って,多少ゆっくりと進むことにする.
最初が,不整合の規則である.
用語の衝突
異なる文間で,異なった名前が,同じ概念を示している.
指示するものの衝突
異なる文間で,同じ名前が,異なった概念を示している.
構造的衝突
異なる文間で,異なった構造が,同一概念に対して与えられている.
これは少し分かりづらい.例としては,会議管理システムにおいて,都合の悪い日を,ある人は,日にちの列挙で与える.別の人は期間で与える.
強い対立
異なる文間で,論理的に偽となる.例としては,「参加者の予定は,他者に伝えてはいけない」と「会議開催者は,全ての参加者の予定を知っていることが望ましい」の関係.
弱い対立あるいは不一致
ある条件下で,異なる文が同時に成立しない.ここでの条件とは,境界条件である.例えば,図書館館員の立場から(必要とされるときに本がないと困るので)「借り手は,2週間以内に本を返却しなければならない」という要求を出す.一方借り手の立場からは,「借り手は,必要な期間本を借りたままにすることができる」という要求を出す.必要な期間が2週間以内であれば,両者は成立するが,それを超えると問題が生じることになる.
(nil)