KAOS (53) 代替策の評価 (3.3-1)

(…)様々な貢献型がある.”マイナス”の貢献をするものからプラスの大きな貢献をするものまで.プラスから順番に並べると次のようになる.実現する(MAKE,++),助けになる(HELP,+),不明(UNKNOWN,?),邪魔をする(HURT,-),阻害する(BREAK,–).(NFR本 1,p. 63)

ここでは,代替手段の選択に関する評価を取りあげている.代替手段の利点は,そもそも何か.

  • 副目的・機能・前提に関する代替となる組合せの中に,適切なものがあれば,目的を達成できる可能性がある
  • システムコンポーネントとソフトウェア−環境の境界との間で,代替となる責任を割当できる可能性がある
  • 代替となる解決策によって,要求文の間の衝突を解消できる可能性がある
  • 代替となる対抗手段の組合せによって,リスクを減らすことができるかもしれない

KAOS的用語が使われているので,少し説明が必要かもしれない.

2番目は,KAOSにおいて,仕様ノードには,操作とエンティティが割り当てられることを思い出す(思い出すといっても,この議論は,第二部に入ってからである.まだ説明がない).或いは,仕様は「誰か」が実行する必要がある.人が実行する場合もあるし,システム化の目的からは,システムの構成品である何かのコンポーネント(即ちソフトウェア)である.もし,ソフトウェアが受け持つ範囲が変化すれば(即ち,境界が変わるので),対応するコンポーネントが新たに必要になる,不要になる,或いは変更が必要になるということである.

もし,不要になれば,(例えば開発労力が減り)プロジェクト視点での要求を充足できるかもしれない.

上記は,当たり前のことのようにも思う.しかし,KAOSを初めとする要求分析手法のメリットは,体系的に実施することにある.体系立てることによって,間違いを減らす.思い込みに基づく争いを防ぐことが可能となる(これは,ひとつの信念かもしれない).


 冒頭のように,これまで何度も登場している NFR本では,プラスやマイナスの記号を用いて,代替手段の貢献を示すことができる.以下は,単純な例である.

NFRにおける貢献度の図的記述法の例

NFRにおける貢献度の図的記述法の例

この図の例では,正確さに対して,柔軟なユーザインターフェイスというソフトゴールは,マイナスである.即ち,目的達成の邪魔をしている.優先度の付加はプラスの効果である.正しいかの「確認」を行うことは,まさに正確さの実現ということになる(NFRの図式の説明は,いずれ行いたい.!は,重要なソフトゴールであることを示している).

質的な代替手段の評価においては,KAOSでもこの方式を勧めている.

(nil)

Notes:

  1. Chung, L., Non-functional requirements in software engineering. Kluwer Academic: Boston, 1999.