今回は,手計算で,前回のペア比較表から,各代替案の重みと整合性指標を求める.
代替案A | 代替案B | 代替案C | |
代替案A | 1 | 9 | 5 |
代替案B | 1/9 | 1 | 1/4 |
代替案C | 1/5 | 4 | 1 |
列の合計 | 1.311 | 14 | 6.25 |
前回と同じであるが,列の合計値を加えている.
この合計値を用いて,各列を正規化する.
代替案A | 代替案B | 代替案C | |
代替案A | 0.763 | 0.643 | 0.800 |
代替案B | 0.085 | 0.071 | 0.040 |
代替案C | 0.152 | 0.286 | 0.160 |
列の合計 | 1.000 | 1.000 | 1.000 |
次に,行毎の平均をとり,重みベクトルとする.
代替案A | 代替案B | 代替案C | 平均 | |
代替案A | 0.763 | 0.643 | 0.800 | 0.735 |
代替案B | 0.085 | 0.071 | 0.040 | 0.065 |
代替案C | 0.152 | 0.286 | 0.160 | 0.199 |
列の合計 | 1.000 | 1.000 | 1.000 | 0.999 |
重みベクトルは,1tになる(丸め誤差で,合計が1ではない.tは転置行列であることを示している).最初のペア比較表に,この重みを掛け合わせる.主たる目的はここで達成している.次は,そもそも妥当な入力を最初にしたかの確認用である.
代替案A | 代替案B | 代替案C | 行の合計 | 合計/重み | |
代替案A | 0.735 | 0.585 | 0.995 | 2.315 | 3.150 |
代替案B | 0.082 | 0.065 | 0.050 | 0.197 | 3.031 |
代替案C | 0.147 | 0.260 | 0.199 | 0.606 | 3.045 |
ここで「合計/重み」の平均値を計算すると,3.08が得られる.これで,表計算は終了である.大学に入った最初の線形代数演習を,いつも思い出してしまう.
この3.08が,ペア比較マトリクスの最大固有値(λmax)になる(有効桁数を4桁以上とると,3.07127となる.ただ入力値が実験結果というわけではないので,細かな違いを気にしても仕方がない).
ここから,整合度指数(Consistency Index,CI)を計算する.計算式は,次である.
CI = (λmax – n)/(n – 1)
有効桁数値を増やした値を用いて計算すると,CIは,0.0357となる.通常は,この値が,0.1より小さければ,ペア比較マトリクスは妥当とする.
さて,まとめる.今回の計算で重要なのは,重みベクトルである.重みベクトルは,最終的な代替案の重要性を示している.ここでは,1t であり,優先度は,代替案A>代替案C>代替案Bとなる.
もう一つは,最後に計算したCI値である.前回見たようにペア比較するときに,全体の表をイメージしてしまうと,ペアでの比較ではなくなる.そこで整合性をあえてとるような入力をすると,CIはゼロになってしまう(実際には,入力可能な値に限りがあります).或いは,一貫性を持たない入力をすると,大きな値になる.
閾値0.1は,経験値である.しかし,不真面目な入力をチェックするのに役立つ.特に,アンケートでは.
(この項つづく)
(nil)