有限状態機械は,記憶素子を持つスイッチング回路からコンピュータ全体に至るシステム理論的モデルでもあるし,またコンピュータのプログラムの構造など,ソフトウェアシステムを説明するときにも用いられる重要な概念である 1.
前回の続きである.
1が連続するときに,1を出力する機械(それ以外はゼロを出力)は,以下のようにも書ける.
ずいぶんとシンプルになっている.こちらの記法が状態遷移図としては,見慣れているかもしれない.
遷移に付随しているラベルは,入力と出力を表している.例えば,1/0 であれば,入力が1のときに0を出力することを示している.全く両者は等価である.
歴史的には,前回の記法は,Moore型と云われ,今回の書き方がMealy型と呼ばれる.共に50年以上前に活躍した研究者の名前にちなんでいる.簡単に違いをまとめておく.
Moore型 | 出力は状態だけで決まる | 状態中のアクション(e.g. entry action) |
Mealy型 | 出力は状態と入力で決まる | 遷移上のアクション |
最後のカラムは,例えばUMLの有限状態機械図で記載する場合の記述場所である.混在した書き方も可能なのだが,少なくとも要求分析段階では,望ましくない.
(nil)
Notes:
- 岩田茂樹,笠井琢美,「有限オートマトン入門」,森北出版,1986.前回と今回はこの教科書にある例を用いていています ↩